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北の喜怒哀楽 45年間を北朝鮮で暮らして

北の喜怒哀楽 45年間を北朝鮮で暮らして

ISBN978-4-88471-446-8

著者:木下公勝

定価:1,540円(税込)

286頁 46判 ソフトカバー

内容の紹介
1960年代初めに家族と共に帰国事業で北朝鮮に渡った著者は、45年暮らして日本に戻ってきた。「人は私たちを『脱北者』と呼ぶが、『脱獄者』ともいえる」と著者は言う。豊かな日本では、北の人権弾圧や飢餓状況などについてはマスコミで報道される程度の知識しかわからない。本書で著者は「北朝鮮住民は、言論と行動を完全に統制されている。言葉の表現を一つでも間違うと、即逮捕・連行される。社会生活にしろ家庭生活にしろ、常に監視されている。」と書いている。自らが経験した北朝鮮での生活の実態を、ありのまま伝えている。(「まえがき」より)

出版社から
1960年代初め、帰国事業で北朝鮮に渡った少年が、45年間北朝鮮で暮らしてきた体験をそのまま記している。炭鉱で死んだ親戚、日本人妻の悲劇、ソ連への密航、政治犯収容所の撤去工事等々。そして、どんな政治体制下にもある日常のささやかな喜びと恋愛。北朝鮮の人々の生活を実感をもって知ることができる。

著者 木下公勝(きのした きみかつ)
1960年、10代半ばにて、両親に連れられて帰国事業で北朝鮮に渡る。
2006年脱北、日本に戻る。現在も北朝鮮に親族を残しているためプロフィールは明らかにできないが、統一日報紙にて「脱北帰国者が語る『北の喜怒哀楽』」と題し、北朝鮮での生活を帰国者の立場から連載した。本書はこの連載の一部をもとにして再構成し、さらに単行本化にあたって加筆したものである。

目次

まえがき
第一章 北朝鮮への「帰国」
 帰国事業 切手の裏に秘めた約束
 北朝鮮上陸
 学校生活
 抑えきれなかった怒り
 農村動員
第二章 北朝鮮での生活
 中国に渡る
 公開処刑
 変わっていった人々の意識
 大学進学をあきらめて就職
 帰国者が集まる安村家
第三章 炭坑での落盤事故と吉村家の悲劇
 安村家を襲った不幸
 貴信、生きていてくれ!
 涙の再会
 雨に濡れたチマチョゴリ
 貴弘も…
 張承姫一家の苦難
 帰国者差別
 帰国者狩りと日本人妻の苦難
第四章 私の結婚と北朝鮮社会の実態
 北朝鮮の芸術文化
 金正日の野心
 北朝鮮での恋愛
 交際の始まり
 命がけの脱走
 北朝鮮の選挙
 忠誠の外貨稼ぎ
 帰国者だけに課せられた外貨稼ぎ
 ウソで塗り固められた社会
 賄賂社会
 北朝鮮の無償治療
 無料教育制度
 無能な人間が支配する北朝鮮
 朝鮮労働党5課の「美女狩り」
 妻よりも幹部の動向を把握する「記述書記」
第五章 私の見たソ連邦(一九八二年)
 北朝鮮で聴いた音楽と外国へのあこがれ
 金英範との数奇な出会い
 「フレーブをよく味わってくれ」
 アレクセイ・ニコライ・イワノビッチ・キム
 ソ連人の生活
 帰還
 麝香(じゃこう)を現金に
第六章 政治犯収容所の解体工事(一九九一年)
 大打撃となった東欧の崩壊
 政治犯収容所に入る(咸鏡北道K区市党員突撃隊と呼んでいた)
 難工事の連続
 A区域の解体
 特別列車のための鉄道工事
第七章 金日成の死と社会崩壊
 金日成の死
 荒れる社会
 私も盗みに…
 闇市場(チャンマダン)
 じり貧の帰国者と日本人妻
 国境警備兵との交流
 「小土地」の開拓
 みなで協力 「生存戦争」
 九死に一生を得る
 コッチェビの兄弟
 ネズミの巣から大収穫
 「小土地」でも横行した賄賂
第八章 脱北を決意する
 私の脱北
 中国での潜伏生活
 帰国者であると知られ…
最終章 脱北者から見た日本
 日本人には気づきにくい日本の美点
 脱北者、そして日本の若者に伝えたいこと
 日本人と朝鮮人の違い
 日本に生まれ、日本で死す身としての日本永住権
 そして関東脱北者協力会
あとがき
私は北朝鮮で生活しながら、ある教訓を得た。
それは、長いトンネルに入って数十年間、明かりが見えるまで必死になって前に進んでも何も見えないときには、躊躇せず新しい別の道を選択することが一番賢明だということだ。その道を選択するには過敢な勇気と決断力が必要である。それは行動してみて初めて気づく。
もし私があれこれ複雑に考え、死を恐れて勇断を下すことができなかったら、今でも向こうで艱難辛苦を強いられていただろう。もしかしたらこの世にいなかったかもしれない。
人生を変えるには、それまでの考え方を大胆に捨て、別の道を選択しなければならないときもある。
脱北したことはみじんも後悔していない。同時に四十年以上の苦労は無駄ではなかったと思う。苦痛の中で強くなり、生きる知恵も得ることができたのだから。
詳しく書き残したいことは山ほどあるが、これくらいで私の回顧録をひとまず終えることにしたい。私の未熟な文章を読んでくださった読者の方々に感謝の意を述べる次第である。

(「あとがき」より)

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