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ウイグルの荒ぶる魂    ― 闘う詩人アブドゥハリク・ウイグルの生涯 ―

ウイグルの荒ぶる魂    ― 闘う詩人アブドゥハリク・ウイグルの生涯 ―

ISBN978-4-88471-443-7

著者:萩田麗子

定価:1,650円(税込)

46判 ソフトカバー 288ページ

情熱の花よ 咲け
勇気の道よ 開け
恋人のため 命を捧げよ
どうせいつかは 死ぬ身

かつてドイツの地理学者リヒトホーフェン(1833~1905)によって「絹の道」と名付けられた国際的な通商路があった。この道を通ってローマに絹がもたらされ、この道を通って日本に仏教がもたらされた。
ほとんどの日本人は「絹の道」「シルクロード」という美しい響きを持つことばから、ラクダや馬を連ねて進むロマンチックな隊商のシルエットを連想するだろう。
だが、この道を支配し利権を得るために、千数百年にわたってさまざまな民族、数え切れないほどの人間が争い、大量の血を流し続けていたことを知っている人はそれほど多くはないだろう。
そして、その中のいくつかの都市では、今でも血が流されていることを、どれだけの人が知っているだろうか。カシュガル、ホータン、アクス、クチャ、コルラ、トルファン、クムル〔漢語名・哈密〕は、累々たる屍が何層にも重なり合ったその上に築かれた都市なのである。
そのシルクロードの要衝の地であったトルファンで、アブドゥハリク・ウイグルは詩人の魂を持って生まれた。そして32年という短い生涯を詩作と闘いに捧げ、美しくも激しい「咲け(開け)」という一篇の詩を詠んだ。
その詩を歌詞にした歌は1932年12月から1933年3月まで4か月続いたトルファン民衆蜂起のときに歌われ、義勇軍兵士を鼓舞しつづけた。
(序文より)

内容を紹介
ウイグルの詩人、アブウドゥハリク・ウイグル(1901~1933)は、ウイグル近代詩の幕開けというべき美しい詩を残し、若くしてトルファンの民衆蜂起を指導、捕らえられて処刑された。彼の激烈な生涯と全詩集を翻訳した本邦初の評伝。

推薦の言葉
アブドゥハリク・ウイグルはウイグルの伝統詩を引き継ぎつつ、その中に近代的な個人の内面を描き出した。そして社会活動家としても活躍。
社会の近代化を拒み、ウイグル人を抑圧する漢民族支配に抵抗し、ついに処刑されるが、その詩と生涯は今もウイグル民族の心に生き続けている。
現在のウイグル問題の原点を知るためにも、また漢族とは全く異なる中央アジアの文学を知る上でも必読の一冊。

目次
第一部 アブドゥハリク・ウイグルの生涯
序章
第一章 1901年~1917年
一 詩人の誕生
二 祖父ミジトと祖母エレムスィマハン
三 ピルチェンギの再来
四 教育/一度目の留学
五 小さな目撃者 (詩人はレンガ職人・二人の物乞い・さらされていた首)
第二章 1918年~1923年
一 学堂時代
二 伴侶 
三 闘う詩人の誕生・タハッルスはウイグル
四 二度目の留学
第三章 1926年~1932年
一 啓蒙活動の開始
二 先生たちの活躍
三 悲劇
四 ローズィ・モッラー
第四章 トルファン民衆蜂起
一 民衆蜂起の発火点
二 トルファン民衆蜂起
第五章 詩人の最期
一 母に遺された詩
二 骨から出てきた詩
三 最後の詩
四 1933年3月13日
終章 
第二部 アブドゥハリク・ウイグルの詩

著者プロフィール
萩田麗子(はぎた れいこ)
1950年 熊本県生まれ。
1983年 東京外国語大学大学院修士課程アジア第二言語科修了。
1988-1989 カラチ大学(パキスタン)留学。
1994-1995 新疆大学(中国)留学。
訳書:『ウイグル十二ムカーム』

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